落語で泣いた。中村仲蔵(2015年9月)
9月の長雨もおさまり、涼しくなって来た
シルバーウィーク明けの週末(2015年9月鑑賞)
ためしてガッテンの司会者で有名な
志の輔師匠の落語を聴きに行きました。(以下敬称略)
落語に興味ある方なら
ご存知だと思いますが
東京だと今一番チケットが取りにくい
落語家なのです。
今年の6月に川崎の独演会を聴けたのですが
その時は面白いには面白いけど
同じくらいか同じネタなら
むしろ小朝のが面白かった
やっぱりテレビの力は大きいのかと思っていました。
今回の公演で
その考えは一掃されました。
元々滑稽話よりも
人情話の方が好きなのです。
落語聞かない人には
何を言ってるのか
わからないと思いますが
落語で有名なネタは笑い話が主なので
滑稽話と言います。
自分も落語を高座で聞くようになって
知ったのですが
落語は滑稽話の他に怪談話や艶笑話、人情話があるそうです。
だいたい寄席にかかるのは9割がたが滑稽話です。
なぜなら通常高座の時間は15分から30分くらいなので
長い話はかかりにくいし
客は笑いに来てるので
怖がらせたり、感動させたりするのは
難しいからです。
ので人情話や怪談話は
真打の方でないと演じる
機会は少ないかと思います。
今回は志の輔の独演会なので
じっくり人情話の中村仲蔵ができるのです。
中村仲蔵の落語
ちょっとだけさわりを紹介しますと
血筋が一番と言われている
歌舞伎界で
一般の庶民から
名題まで上り詰めた
中村仲蔵のエピソードを紹介しています。
志の輔の公演は2部に分かれていて
1部は仮名手本忠臣蔵の詳細な解説。
自分も知らなかったのですが
我々が知っている
忠臣蔵はほとんど
この仮名手本忠臣蔵のことだそうです。
忠臣蔵の元ネタは
赤穂事件で
これは浅野内匠頭が
それを重く見た時の将軍綱吉が
浅野に切腹を命じる。
これを不服とした
大石内蔵助をはじめとした47志士が
主君の仇を見事討ち果たす。
この赤穂事件を47年後に
仮名手本として作られたのが
仮名手本忠臣蔵だそうです。
ので実在の人物とは違う名前
例えば大石内蔵助は大星由良助とされています。
また時代も南北朝時代に変えられています。
この仮名手本忠臣蔵は
12段目まであるのですが、
5段目があまり面白くなく
以前は弁当幕と言われていました。
当時の歌舞伎は朝の3時頃から始まったそうです。
そうするとちょうど5段目あたりが
昼にあたり
5段目はたいした盛り上がりもないので
みんなその時に
弁当をぱくつく
そんな扱いだったらしいです。
脚本家の金井三笑に
嫌がらせをうけ
名題では不相応な(格下の役)
5段目の斧定九郎の役をもらう
斧定九郎は山賊扮装をして
無様に打たれる
そんな端役なのですが
これを自ら演出し、変えて
当時の江戸の歌舞伎通たちを
うならせたそんな楽しいエピソードを
落語にしたのです。
同門の志らくのは聞いたことがありました。
志の輔の方が良かったです。
志の輔が得意と言ってるだけあって
この話は他の話よりも
入念に語っていました。
志の輔のこの話にかける
情熱が伝わって
5段目の仲蔵の話は
歌舞伎を観客が見ているような
気持ちになりました。
まだ見ぬ歌舞伎役者の演技が
(仲蔵はとっくに亡くなられた方なので、見られなくて当たり前なのですが)
あたかも目の前で演じられているような
気がしました。
周囲からは
笑い声と涙で鼻をすする音が聞こえる
感動の涙と笑いの涙が混ざる
そんな素晴らしい落語でした。
志の輔の落語はこれなんだなぁ
としみじみ思いました。
志の輔は普通の独演会より
テーマを決めた独演会がおすすめです。
ただ非常に人気があるので
チケットが取りにくいのが欠点ですが
中村仲蔵は是非1度聞いて欲しい落語ですね。