三谷幸喜の重喜劇 国民の映画(2015年7月)
三谷幸喜と言えば日本を代表する喜劇作家、最近では清州会議、素敵な金縛りなど精力的に映画も監督している方です。
元は密室劇を得意とするシチュエーションコメディの大家です。古くは12人の怒れる男たちをパロディにした12人のやさしい日本人、ラジオの時間など密室で繰り広げられる様々な性格の人々を自由自在にあやつり観客を笑わせる軽喜劇が得意な作家です。
今回は久しぶりに軽喜劇ではなく重喜劇を扱っています。
三谷作品では戦中の日本の劇作家の悲劇をを題材にした笑の大学があります。
国民の映画ですが、主人公はナチスドイツの時代の宣伝大臣ゲッペルスの苦悩を描いています。
登場人物が全て実在の人物のため、ある程度は史実に基づいています。
ストーリーはゲッペルスが<風と共に去りぬ>のような壮大な娯楽映画を作りたいと、主要なスタッフを自分の家に招くところから始まる三谷得意の密室劇です。
今回の舞台はゲッペルス邸になります。
渡辺徹、風間杜夫、小日向文世、段田安則など有名な俳優が出演しています。ドイツの新人女優の役で元AKB48の秋元才加もゲスト出演しています。
で感想は、映画芸術とは何か?をまじめに論じている、喜劇というよりはナチスへの批判や劇作家としてのプライド、ユダヤ人差別問題など、少々重いテーマを取り扱っているのため、一連の三谷作品の中ではコメディの度合いが低くなっています。
ラジオの時間や有頂天ホテルなどコメディの度合いが高い作品が好みの人はちょっと戸惑うかもしれません。
三谷作品の中で近いのは、冒頭でも触れましたが<笑の大学>だと思います。
重喜劇は結構好きなので、新しい境地の作品に出合えて、個人的には凄く楽しめました。
俳優の演技では主役の小日向さん、普段は脇役ばかりなので、久しぶりの主役のせいか、演技がいきいきしていました。
特出すべきはヒムラー役の段田さん存在感のない演技で観客を笑わせていました。
あと劇作家役の今井朋彦、この方は舞台がメインの方のようで、さすが舞台慣れしていて次から次へとなめらかなセリフが溢れるように出てくる演技は感嘆しました。
執事役の小林隆さんも抑えた演技が良かったです。
秋元才加は少々上がってたのか、演技に余裕がなかったように見えました。これからの活躍に期待します。
渋谷パルコ劇場40周年記念にふさわしい演劇でした。(2014年2月鑑賞。渋谷パルコ劇場)